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銀行アプリ:次のイノベーションはデジタル・レシート管理?

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弊社では、デジタル・バンキング時代の差別化施策として「銀行モバイル・アプリでデジタル・レシートの受領/管理が可能になる」という仮説をたて、米国/英国/ブラジル/オーストラリアの消費者2500人に利用の可否を聞きました。その興味深い結果をレポート:Consumer Clarity: Seamless Merchant Interactions Through Innovative App Featuresにまとめました。


■ 4か国消費者アンケート調査
銀行モバイル・アプリが普及したことで、今後は他行と異なるサービスを付加することで差別化施策としたいと考える金融機関も増加している。Datos Insightsでは、チェックアウト時の(カード決済による)レシートを銀行アプリで受領することを想定、米国/英国/ブラジル/オーストラリアの消費者計2500人(米国1000人/他各500人づつ)にアンケート調査を実施してその関心度を探った。具体的には「デジタル・レシートの受領/管理」に加え、「カードで決済している定期購読の解約」「カードで購入した商品の返品」「カード不正利用に対する通知」などの付加価値サービスが銀行のモバイル・アプリで提供されれば利用したいかどうかを聞いた。

消費者の反応は非常に前向きなものだった。デジタル・レシート(現在提供されているサービス:後述)を利用したことのある1800人のうち90%以上が「便利だ」と回答、更に銀行がモバイル・アプリでデジタル・レシート受領/管理が可能になることに対し、過半数が関心があると回答した。興味深いのは、ブラジルの調査結果が最も前向きだったことだろう。ブラジルではネオバンク(注)のNuBankが既にデジタル・レシート受領サービスを提供しており、国民の平均年齢が最も若いこともこの結果を後押しした思われる。

(注)NuBankは、世界で最も成功したデジタル・バンクの一つで、人口2億1000万人のブラジルで8000万口座を獲得している。


■ デジタル・レシートの現状と認識
現在、米国をはじめとする各国では、お店にとっては「用紙の節約」、顧客にとっては「レシート管理の利便性」との視点からデジタル・レシートが推進されているが、現時点での対応方策では、最初の1回だけとはいえ消費者は店頭チェックアウト時にメールアドレスか携帯電話番号(日本ならばLine?)を入力する必要があり、必ずしも普及しているとは言い難い。加えてプライバシーの観点から懸念を抱く消費者もいる。英国では米国よりもネオバンクが多いためか、米国よりも前向きな調査結果だった。

ちなみに、金融機関がデジタル・レシートに関心を持つ背景は、前述の「定期購読解約」「返品」等のサービス提供以外に大きな野心がある。自行発行(或いは自行系列のカード会社発行)のカード利用に関するレシート情報が集まれば、顧客の消費動向を精緻に把握できるという大きなメリットが想定されるからだ。加えて、カード情報から個人とその銀行口座が紐づけられるので、消費者が個人情報を入力する必要がない。


■ レギュレーション遵守とシステム・インフラの必要性
もちろん課題もある。銀行のモバイル・アプリにデジタル・レシート管理機能を盛り込むには、個人情報保護/データ・セキュリティなどレギュレーション遵守が大前提となる。また各金融機関とそれぞれの小売事業者が個別に連携システムを構築することは事実上不可能であり、カードネットワークのような何らかの業務インフラが必要となる。更には、金融機関と消費者のメリットに加え、小売事業者のメリットも明確にする必要がある。

ここに解説したようなデジタル・レシート管理機能が金融機関から提供されるかどうかは不明だが、金融機関がデジタル・バンキング時代の差別化施策を模索していることは確実であり、その動向を引き続きフォローしておきたい。