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デジタル・バンキングとWeb Accessbilityへの配慮

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金融サービスのデジタル化が進展する中、ウェブ・アクセシビリティへの配慮が次第に重みを増しています。弊社ではレギュレーション動向や金融機関の取組み、この分野のサービス・ベンダーの状況などをレポート「The Accessibility Challenge in Digital Banking」にまとめました。ここではその概要をご紹介します。


■ ウェッブ・アクセシビリティ
調査によると、米国では国民の12%程度が何らかの障害(先天的/後天的/一時的/年齢からくる問題などを含む)を持つ一方、視覚障害や聴覚障害にフル対応しているWebサイトは3%でしかない。このような状況に対して、Webサイトの技術標準化団体:W3C(World Wide Web Consortium)が「ウェブ・コンテンツ・アクセシビリティ・ガイドライン(WCAG)」を発行、各国がこれに基づく規制/法律を策定している。

日本では、2024年4月より障害者差別解消法の改正法が施行され、ウェッブ・アクセシビリティが「努力義務」から「合理的配慮の提供義務化」となった。Webサイト上での具体的な対応が義務化されたわけではないが、それに向けての前進と言えよう。


■ 金融機関の取組み
金融業界でも、デジタル・バンキングが推進される中、ウェッブ・アクセシビリティを重視しなければならない時代となってきた。先進的な取り組みとしては、JPモルガン・チェイス銀行では、Office of Disability Inclusion部門を設け、リテール顧客向けWebサイトの対応を進めるだけでなく、障害者の雇用なども積極的に進めようとしている。バンク・オブ・アメリカのAccessible Bankingも同様の取組みと言えよう。

企業としてのステートメントを示し、リテール・バンキング顧客向けWebサイトのアクセシビリティ対応を進めている金融機関は増加しているが、コマーシャル・バンキング分野(顧客企業の担当者を対象としたアクセシビリティの提供)や金融機関自身の社員をも含む総合的な取組みを進めているケースは、まだ少数派のようだ。


■ ウェッブ・アクセシビリティ・ベンダー
企業がWeb Accessbilityの強化に注目する中、この分野に特化したソリューション/サービス・ベンダーやコンサルティング企業も登場している。各社ともども企業顧客がWCAGガイドラインに対応できるよう、以下のようなサービス・メニューを提供している。
・ガイドラインに準拠しているかどうかの監査(オーディット・レポート作成)
・Webサイト開発時における、ガイドライン準拠の為のデザイン・ガイド/トレーニング
・既存Webサイトの修正/機能追加サービス/Wdgetの提供
・Webサイト評価サービス
・WCAGコンプライアンス・マネジメント

金融機関向けに特化したベンダーはまだないようだが、自社の顧客として金融機関や金融業界向けソリューション企業を掲げているベンダーも見受けられる。

金融業のデジタル・バンキング・シフトが進む中、今後、ウェッブ・アクセシビリティへのより積極的な取り組みが必要であることは間違いない。早めに取り組めばそれ自体を差別化施策にできるとの見方もある。金融機関の対応やガイドラインの進展に注目しておきたい。