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August 30, 2024
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CMEグループがグーグル・クラウドへの移行を発表
2024年6月、米国の先物取引所最大手であるCMEグループとグーグルが先物取引/オプション取引をクラウド環境へ移行すると発表しました。導入時期は2025年以降と思われますが、取引所取引の事業環境が抜本的に変わる可能性もあり、現時点での反響をまとめてみました(この日本語ブログは、弊社アナリストのJames Wolsternholmeがまとめたブログ「Speed and Scale, CME and Google—Take Your Pick」を参照しています)。 ■ CMEグループのクラウド移行CMEグループとグーグルは、シカゴ郊外にあるCMEグループのデータセンター・キャンパス内にグーグルのプライベート・クラウド・リージョンを建設、CMEのトレーディング機能とコロケーション環境をクラウド移行する。 CMEは、2021年にグーグルからの出資を受け入れてデリバティブ市場のシステム・インフラ革新を加速させるとしていたが、今回のデリバティブ取引のクラウド移行計画はその具体策となる。これまでクラウド環境は低レーテンティー取引の信頼性を損なうと考えられてきたが、今回のCMEとグーグルのクラウド移行計画はこれを覆すもので、その成果が注目される。 ■ HFT以外の市場参加者にもメリットデリバティブ取引のクラウド移行が実現すれば、HFT(高頻度取引)事業者にはスピード面/コスト面から大きなメリットがあるだけでなく、HFTを行わない一般ユーザー(バイサイド企業のトレーダーや中小規模の機関投資家など)にとっても、取引のスピードアップとHFTがもたらす流動性を享受できるため、サイズの大きな注文でもマーケット・インパクトを与えることなく/少なく、迅速に実行できるとの期待が高い。 また、CMEは、2021年にOTC市場のポスト・トレード・ソリューションを提供するIHS Markitとジョイントベンチャー:OSTRAを構築しFX/金利/株式などの取引から決済までを一体化して提供するとしていた。今回の取引のクラウド移行には、OSTRAのポスト・トレード・サービスも組み合わされるものと思われる。 ■ クラウド活用によるビジネス環境変化の可能性昨今、欧米のバイサイド企業では、多様なマルチアセット取引を効率的に行いたいというニーズが高まっているが、クラウド環境はこの面でも期待が大きい。前述のようにオプション/先物/デリバティブなどの流動性が高まれば、いつでも取引できるとの安心感からポートフォリオへの多様なセットクラスの組込みが推進されるだけでなく、その種類もクレジットやクリプトなどオルタナティブ商品へ広がる可能性が考えられる。 一方、大手のバイサイド企業はこれらの変化(ポートフォリオの多様化やクラウドを利用したマルチアセット取引など)に対応できても、中堅の機関投資家にはテクノロジー面での敷居が高くなると思われるが、そこを埋めるトレーディング分野のアウトソース・サービスがすでに出現している。 このように、金融取引所市場がクラウド・ベースになれば、現在ある様々な制約や懸念が解消され新たな変革が加わる可能性が高い。キャピタル・マーケッツにおけるクラウド活用に関しては、このような波及効果にも注目しておきたい。
Susumu Suzuki
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August 18, 2024
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プライベート・マーケット:ブラックロックがPreqinを買収した理由
2024年7月、ブラックロックが、プライベート・マーケットのデータプロバイダー:Preqinの買収を発表しましたが、ここではその背景を考えてみました。(当ブログは、弊社アナリストAdler Smithがポストしたブログ「Why Is BlackRock Acquiring Preqin?」の翻訳版となります)。 ■ 買収発表の概要世界最大の資産運用会社であり、キャピタルマーケッツ企業へのテクノロジー・プロバイダーでもあるブラックロックは、プライベート・マーケットのデータプロバイダー:Preqin社を32億米ドルで買収すると発表した。 ブラックロックは、Preqinが提供しているデータとリサーチ・ツールを自身の統合ポートフォリオ管理サービス:Aladdinの中のオルタナティブ資産管理ソリューション:eFrontに統合することで、プライベート・マーケット関連機能を大幅に強化することができる。オルタナティブ資産は、2030年ごろまでに40兆米ドル近くに達すると想定される急成長分野である。 ■ 買収の影響Datos Insightsでは、今回の買収はプライベート・マーケットへの注目が高まるキャピタルマーケッツ業界の大きな流れに沿ったものだと考えている。 1.オルタナティブ・データの提供拡大:Preqinは、プライベートエクイティ、ベンチャーキャピタル、ヘッジファンド、不動産、インフラストラクチャー、プライベートデットなど、オルタナティブ資産に関するデータを網羅しており、プライベート・マーケットに関するデータ需要が拡大している現在、ブラックロックにとっては、資産運用会社としての自社利用だけではなく、テクノロジー・プロバイダー/データ・アグリゲーターとしても大きなメリットが想定される。 2.顧客サービスの強化:ブラックロックは、Preqinのデータとリサーチ機能をアラジンに統合することで、機関投資家やウェルスマネジメント顧客に対して、オルタナティブ投資に関する多様なサービスを提供でき、アラジンの競争力が高まる。 3.プライベート・マーケットの重要性の高まり:機関投資家や富裕層顧客は、投資ポートフォリオに対するオルタナティブ資産の組み入れを増やしているものの、プライベート市場へのアクセスやデータに関する透明性/可用性/標準化などには課題が残っている。今回の合併は、これらの課題に対するブラックロックの回答の第一歩と言えよう。 4.Front-to-Backプラットフォームへの需要拡大:ブラックロックは、2019年に買収したオルタナティブ資産管理ソリューションeフロントをAladdinプラットフォームに統合してきたが、今回それにPrequinのデータが加わることで、Aladdinをより包括的なポートフォリオ管理プラットフォームとすることができる。 5.プライベート・マーケット・ソリューションの事業統合:ブラックロックとPreqinの合併は、統合が進むプライベート・マーケットに関する金融データ・アナリティクス・ソリューションの象徴ともいえよう。これまでの合併事例としては、以下がある。・2023年:MSCIによるプライベート・マーケット・データ/テクノロジー・プロバイダBurgissの買収・2021年:ステート・ストリートによるプライベート・マーケット投資データ管理プラットフォームMercatusの買収・2016年:モーニングスターによるプライベート・マーケット・データ/分析プロバイダPitchBookの買収 ■ 今後の注目点買収提案が正式に決まった後は、ブラックロックがPreqinのデータとリサーチ・ツールを自社のAladdinにどれだけ迅速に統合できるか、また、ブラックロックがPreqinのソリューションを引き続き単独で提供するのかどうか/いつまで提供するのかが注目される(現時点では、単独でのサービス提供が引き続き行われるとされている)。 Datos...
Susumu Suzuki
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August 18, 2024
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消費者がメインバンクに求める機能とは:米国消費者調査
米国には、4大メガバンクから地方銀行、信用金庫、デジタルバンクまで総計9000行の金融機関が存在します。Datos Insightでは、どのような消費者がどの種の金融機関をメインバンクとし、またどのような機能を求めているのか、消費者2500人に対するアンケート調査を実施、その結果をレポート「Redefining the Primary Financial Relationship」にまとめました。ここでは興味深い結果をいくつかご紹介します。 ■ 消費者がメインバンクを選ぶ理由米国では、消費者1世帯平均金融機関3.9社との取引がある。内訳は普通口座(Checking口座)=1.7口座、クレジットカード=1.7枚、P2Pペイメント=1.3社、貯蓄口座=1.0口座などであるが、本人が「メインバンク」と認識している金融機関の選択基準の第一位は「便利なところに支店/ATMがあること:53%(複数回答可)」だった(メインバンクの定義は回答者に任せたが、ほぼ全員が「給与振込みと自動振替/自動引落しを設定している金融機関」と認識)。どの年齢層でも選択基準第一位の理由は同じだったが、70歳以上のシニア世代では67%と非常に高いのに対して、Z世代(30歳以下)では40%だった。 一方、どのような種類の金融機関をメインバンクにしているかでは、四大メガバンク(38%)、地方銀行(26%)、コミュニティバンク(13%)、信用金庫(13%)、オンライン銀行(6%)だった。こちらは世代差は少ないが、世帯年収での違いが顕著で、年収15万ドル以上のセグメントでは四大メガバンク利用が53%に対し、3万5000ドル以下の顧客層ではオンライン銀行が15%となった。オンライン銀行のほとんどが、残高に係わらず口座維持手数料を課金しないためだと思われる。 ■ 今後はデジタル・ツールが重要になる?デジタル・ツール(モバイル・ウォレット、P2P支払い、クレジット・スコア管理など)に関しては、消費者1人当たり4.7種類のツールを利用している。ところがその半数以上がメインバンク以外の金融機関やフィンテック企業などのツールとなっている。更にZ世代/ミレニアル世代の60%が、メインバンクに対して各種DIYツールを充実させてほしいと希望しており、この割合はシニア世代やX世代よりもはるかに高い。ここでいうDIYツールとは前述に加えて、家計簿ツールやクレジット・スコア向上アドバイス、節約指南・積立促進、投資アドバイス・ツールなどを指している ■ メインバンクの地位を確立するには・・・次世代顧客は、しばしば支店に行くわけではないが、支店が近隣にあることをメインバンク選択の理由として「Webサイトやモバイル・アプリで分からなかったことを店頭で質問して解決できること」を挙げている。支店の担当者がこの期待に沿うためには、自社のデジタル・サービスに関するトレーニングが十分に行われている必要がある(コールセンターも同様)。デジタル+人的サービスの組み合わせによるカスタマー・エクスペリエンス向上策が必要だ、とも言えるだろう。 また、メインバンクが提供するデジタル・ツールを5種類以上利用している顧客の93%が、ほぼ全資産をそのメインバンクに預けていることも分かった。逆に言えば、金融機関は使いやすいデジタル・ツールを充実させることで顧客を囲い込み、長期にわたるリレーションを構築できる可能性が高まると思われるがどうだろう。
Susumu Suzuki
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