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Date
May 20, 2024
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AIで保険を引受け、保険金申請を受理するレモネード保険
2015年創業のAIを活用するインシュアテック企業:レモネードでは、オンラインでの保険料見積り/即時引受けに加え、保険金申請(クレーム申請)にもチャットボット/自然言語処理を活用、カスタマー・エクスペリエンスに注力したデジタル・インターフェースを提供しています。顧客数も200万人を超え損害率も改善してきたことから、今後の進展が注目されています。 ■ 企業概況:レモネード保険2015年創業のAIをフル活用したインシュアテック企業:レモネードは、火災保険(持ち家用/借家人用)から事業を開始したが、その後自動車保険/ペット保険に進出、更に現在は生命保険(定期保険のみ)も提供しており、2024年初の顧客数は209万人と発表されている。フランスやオランダなど海外への進出も始めている。 同社の特徴は、オンラインだけで保険契約を締結できることに加えて、事故が起こった際のクレームもチャットボットで処理できることだ。保険申込みの際は、住所から建物に関する情報を、また申込者の名前/生年月日/社会保障番号から本人に関する情報をリアルタイムで収集する。さらに住宅に関する質問に回答してもらうことで即時に見積金額を提示、顧客が望めばその場で契約締結が可能となる。 一方、保険金の申請が必要になった際、ユーザーは、モバイル・アプリからチャットボット:AI Jimに状況を説明することになる。申請の30-50%はAI Jimとのやり取りだけで保険金支払いの判断がなされる。背後では、保険金申請の内容と契約内容との精査や、様々な不正を検知できるアルゴリズムが稼働しているという。もちろんAIだけで判断できないケースには、(人間の)スタッフが対応することになる。 ■ 保険申込みに実際レモネード保険で個人住宅保険の見積りをとってみた。まず住所を入力すると築年数や平米数が表示され確認を求められる(上書き可能)。更に外壁や床の素材、屋根をふき替えたかどうか(変更した場合はおおよその年数)、その他建物内の配管や配電、冷暖房の仕組み、地下室の有無など15程度の質問が出される(分からない場合は「不明」回答も可)。現在住宅保険を契約している場合、その補償限度や免責額を入力すると、現状と同じ前提条件で保険料金が提示される(入力しない場合は、推奨補償額が提案される)。 筆者の場合、提示された見積額は現状の住宅保険(AllState)と大差ない金額だったため、契約変更には至らなかったが、5年程前にAllState保険で住宅保険を締結した際の手間(まず保険会社の検査人に査定に来てもらうアポイントをとり、その後1週間程度で営業担当から見積もり金額がメールで提示される)に比べ、非常に簡便なことを実感した。 ■ 今後の期待創業当初より、保険分野でのAI活用最先端と考えられているレモネードだが、生成AIをはじめとする昨今のAI技術の進展は追い風だと言えよう。同社も、2023年度の株主向けレターにおいて「生成AIをあらゆるビジネス・プロセスの改善や生産性向上に役立てる方針であり、18か月を目途に成果がでてくると考えている」としている。既に顧客が申告した住宅に関する情報の評価や顧客からのemailへの回答などには、生成AIの活用を始めているようだ。 企業としての業績も、2023年末時点の保険料収入は8億ドル(前年22%増)、顧客数は209万人(同13%増)と順調な成長を続けており、まだ最終収益は赤字であるものの、損害率(Gross Loss Ratio:保険料収入に対する支払い保険金の割合)も79%まで下がり、一般的な指標と言われる75%以下にもう一息のところまできた。2020年の新規上場のあと、2022年頃からは株価の低迷が続いている同社だが、昨今の市場状況からインシュアテックの雄として見直し機運もでているようだ。レモネード保険の動向、及び保険業界でのAI活用全般に注目しておきたい。
Susumu Suzuki
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May 4, 2024
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米国金融機関の生成AI活用状況
2022年末のChatGPT発表以来、生成AIに関する関心が非常に高まり、金融機関でも様々な活用方策が検討されていますが、米国金融業界における実際の導入事例はまだそれほど多くないようです。ここでは、その背景を探るとともに、実績を挙げている事例をご紹介します。 ■ 慎重な姿勢金融機関における生成AIに対する関心は高いが、米国の場合、実際の導入にはかなり慎重だ。アメリカン・バンカー誌が2024年3月に発表した調査結果によると、回答のあった127行のうち、全社的な生成AI導入の取り組みを進めている金融機関は2行だけで、限定した業務で小規模な導入を行っているケースが15行、パイロット・プロジェクト段階が30行だった。残り80行は「情報収集段階」「導入計画なし」「不明」との回答だった。 慎重な姿勢の背景には「想定外の結果が出る(Unforeseenable results)」「意図しない差別的要素が含まれる(Unintentinonal biases)」「顧客情報の流出」など金融機関として致命的なリスクが生じる可能性に加え、今後、生成AIに関してどのような規制が制定されるかが不明なことも積極的な活用に踏み切れない要因のようだ。積極的に取り組んでいる金融機関でも「生成AIが出した結果を人間が精査してから活用する分野」を優先している。 ■ 生成AI導入事例生成AIを使ったシステム開発/ソースコード作成は有望な分野だ。シティバンクでは、GitHub Copilotをシステム開発要員(Developers)4万人全員が活用するプロジェクトを推進している。AMEXでもシステム開発メンバー6000人が2024年6月までに生成AIを活用できる体制を導入し、10%の生産性向上を見込んでいる。生成AIが作ったソースコードであってもテストは人間が実施するので、想定外の結果が含まれていてもそれを排除するのに大きな問題はないとの認識だ。 コールセンターのエージェント支援も生産性向上に寄与できる分野だ。AMEXでは、プレミアム・カードの所有者向けに旅行支援サービスを行っているが、「ペット同伴可能な高級リゾート・ホテルを知りたい」など、難しい要望の情報検索に生成AIを活用することで、待ち時間が1分程度短縮できたという実績があがっている。ディスカバー・カードでも複雑な問い合わせに対する社内情報検索に生成AIを用いると、エージェントが正解に到達できる時間が短くなったとしている。更に同社では、チャットボットで解決できない問題を(人間の)エージェントが引き継ぐ際、それまでのやり取りを生成AIが要約することで、エージェントが状況を短時間で把握でき、スムーズに引き継げる仕組みの導入を進めている。 このほか、Comerica銀行などでは、社内ヘルプデスクに生成AIを組み込んで質問の回答の中に該当資料へのリンクを提示することで、社員や対応要員の生産性向上に寄与できたとしている。 ■ 今後の活用方策生成AIの可能性は誰もが認めるところだが、予期せぬリスクも排除できない。そのため現時点では(1)マイクロソフトやグーグル等が提供する汎用生成AIを業務に活用して生産性向上につなげるアプローチ(会議結果の要約や原稿作成など)か、(2)生成AIが読み込む情報源を自社データに限定することで回答内容を想定内に納める方策(ディスカバー・カードやComerica銀行の事例)が用いられている。一部のユーザー企業では、オープンソースの生成AIを導入して自社内でそのアルゴリズムを把握した上、新たな活用を検討している企業もある。 いずれのアプローチも生成AIの良さを生かす方策第一歩として有望であり、その他様々な活用が試みられることは間違いない。生成AIをはじめとする人工知能活用の発展に、今後とも注目しておきたい。
Susumu Suzuki
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