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ゴールドマン・サックスが”エンベデッド・バンキング事業部”を創設

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2022年10月、ゴールドマン・サックスは、大規模な組織変更を発表しましたが、中でも新設されたプラットフォーム・ソリューション部門が注目されています。その概要をまとめてみました。

■ ゴールドマン・サックスの組織変更と「Plarform Solutions部門」の創設
2022年10月、大手金融機関のゴールドマン・サックス(GS)は、大規模な組織変更を発表した。これまでの四事業部制から、投資銀行部門とトレーディング部門を一部門に、またアセットマネジメント部門とウェルスマネジメント部門を統合するとともに、第三の柱としてプラットフォーム・ソリューション(PS)部門を新設した。

今回の変更は、経済環境の不透明化を背景に、市況に左右されやすい事業と安定的収益が見込める部門のバランスをとるとともに、中長期的には金融サービス・デジタル化の動きをにらんだ布陣と考えられている。

■ プラットフォーム・ソリューション(PS)部門
PS部門には、金融サービスをエンベデッド・バンキングとして提供している以下のサービスが集められており、今後の進展が興味深い。

(1)クレジットカード/貯蓄口座
GSは、2019年にアップル・カードの発行銀行としてカード事業に参入し、2022年初時点で米国内iPhoneユーザー1億人のうち約650万人がアップル・カードを保有している(ほとんどのユーザーがアップル・ウォレット経由で利用)。2022年10月には、アップル・ウォレットの資金をGoldman Sachsの貯蓄口座に自動積立を行う仕組みも発表された。また、GMカードの発行事業をキャピタル・ワン銀行から獲得しており(ユーザー300万人)、今後デジタル・サービスが付加されると考えられている。

(2)トランザクション・バンキング
2020年に開始した企業向けのトランザクション・バンキング・サービスは、現時点で425社が利用、資産額は700億ドル規模となっている。想定以上に成長した背景には、レガシーシステムのしがらみのない使いやすいシステムに加え、大手企業のニーズに合致するインテグレーションが容易なオープンAPIを全面に打ち出したアーキテクチャがあげられる。

(3)無担保ローン
2021年9月に買収したフィンテック企業グリーンスカイ事業も同部門に移管される。同社は、住宅改修に特化した無担保ローンの自動即時融資プラットフォームで、買収時点で400万人が利用している(実際の融資は、住宅改修を行う住宅事業者1万社(工務店や個人コントラクターなど)経由で行われる)。今後は、POS融資などグリーンスカイの即時融資審査機能の新たな活用が検討されていると思われる。

■ デベロッパー・エクスペリエンス
GSのプラットフォーム・ソリューションは、金融機関が、エンベデッド・バンキング事業を全面的に打ち出した初めての事例だと思われる。同社には、1万1000人のエンジニア(全社員の約25%)が在籍し、CIOのArgenti氏はアマゾンAWS出身だ。同氏は、エンベデッド・バンキング事業が成功するかどうかは、使いやすいAPIを提供し、顧客企業の業務システムや金融サービスのエコシステムとしてインテグレーションや運用がスムーズに行われるかどうかだとしている。

現時点のPS部門の収益は、GS全体の5%程度に過ぎないが、期待は大きい。アップルやGMなど提携企業のデベロッパーや、トランザクション・バンキングを利用する大手グローバル企業のIT部門が、ゴールドマン・サックスのエンベデッド・バンキングをどう評価するか注目しておきたい。