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銀行サービスに対するZ世代のニーズ:ミレニアル世代との違い

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消費者の行動様式の違いを把握するため、様々な業種で世代別分類(ベビーブーマー/X世代/ミレニアル世代/Z世代)が用いられます。昨今、Z世代(1990年代後半から2010年生まれ)が社会に出る年代となり、ミレニアル世代との違いが散見されることから、金融業界では、両者を「デジタル・ネイティブ」とひとまとめにせず、それぞれに合わせた事業施策を考える必要があるとの見方が出はじめています。


■ 年齢別行動パターン調査
日本では、ミレニアル世代の割合は人口の17%、Z世代は15%と低いため、金融機関はこの世代をまだ主要顧客とみなしていないようだが、米国はその割合がそれぞれ22%/21%であるためか、この世代への対応が大きなビジネス課題となっている(グローバルでは、24%/34%と更に高い)。

昨今、ミレニアル世代が40歳代に突入する一方、1990年代生まれのZ世代が社会の一員に加わりはじめ、その行動様式の違いが認識されるようになった。Z世代は、まだティーンエージャーから20歳代半ばだが、デジタル・ネイティブであるからか各種オンライン・アンケート調査へのレスポンスが良く、その意識を把握しやすい。

(ご参考:米国における世代の定義)
・ベビーブーマー:1945年から1964年生まれ(2023年現在、60歳前後から70歳代)
・X世代:1965年から1980年生まれ(43歳から58歳)
・ミレニアル世代:1981年から1995年生まれ(28歳から42歳)
・Z世代:1996年から2010年生まれ(13歳から27歳)


■ 銀行利用に関するアンケート調査
Datos Insightsでは、2022年第四四半期、米国消費者3000人に対し銀行利用に関する調査を実施し、その結果を世代別に集計した。そこでは、従来の認識である「ミレニアル世代/Z世代はデジタル・チャネル利用が多い、ベビーブーマー/X世代は店頭利用が多い」とは言い切れない興味深い結果が得られた。ここではそのいくつかをご紹介したい:

(質問1)新規に銀行口座を開設する際、デジタル・チャネルを利用したか?
・ミレニアル世代の55%と比較し、Z世代は25%と圧倒的に低かった(=支店利用が多い)
・もちろん、銀行口座開設が生まれて初めてだったケースや、モバイル・アプリの使い勝手が悪く、途中で分からなくなった可能性もある。

(質問2)デジタルバンク(=支店のないネット銀行)をメインバンクとしているか?
・Z世代の回答は11%と、ミレニアル世代の18%、X世代の14%よりも低かった。
・前述のデジタル口座開設と関連しているかもしれないが、Z世代でも従来型銀行のシェアが高い。

(質問3)貯蓄する目的は何か?
・Z世代では「家を買う」が51%を占め、ミレニアル世代の37%よりもかなり大きい。
・一般論として、Z世代はプライベート重視/社会秩序重視と言われているが、これもその表われかもしれない。

これらの結果は更なる分析が必要だが、ここでもミレニアル世代とZ世代を分けて考える必要性を示唆しているように思われる。


■ データを活用したパーソナライゼーション
新規顧客を獲得し定着させるには、良好なカスタマー・エクスペリエンスが最大の武器になると考えられている。ただ更なる差別化やクロスセルのためには、データ分析に基づいたサービスのパーソナライズが欠かせず、更にそれをリアルタイムで提供する仕組み(Webサイト/モバイル・アプリの改善に加え、店頭/コールセンターとの連携を含めたオムニチャネル・インフラ)が必要になる。

最後に、金融機関ではないが、最近経験したパーソナライゼーション事例をご紹介したい。

筆者は、11月にApple.comでiPhoneを購入したが、その際「おまけ」としてアップル・ギフトカードをもらった。12月に入って、このギフトカードに関する問い合わせでAppleのカスタマー・サービスに電話したが、最初の自動音声応答は「頂戴したお電話番号から推測するに、11月に購入されたiPhoneの件でしょうか」だった。びっくりするとともに「パーソナライゼーションもここまで来たか」と思った。金融機関もZ世代のメインバンクになるためには、このような方向をめざす必要があると思うがどうだろう。


(参照)
・Datos Insights(ダトス・インサイツ)2023年9月発行レポート「What Bankers Should Know About Gen Z