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Walmartが金融サービス参入?:Neobankと超短期融資ベンチャーを買収

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2021年に創設されたウォルマート傘下のFinTechベンチャーHazelが、ネオバンク:One Financeと、社員向け超短期融資サービス:Even Responsible Financeを買収した話題です。米金融業界では、Walmartが本格的に金融サービスに参入するとの見方から大きな注目が集まっています(プレスリリース)。

■ ウォルマートと金融事業
Walmartは、全米で5,000店舗を運営、売上高5,600億ドルを誇る世界最大の小売業で、昨今ではECサイトWalmart.comも大きく売上を伸ばしている。金融サービスへの進出意欲も旺盛で、過去には銀行免許の取得を目指した時期もあったが、現在は、提携クレジット・カード(Capital One銀行と提携)や再チャージ可能で給与振込先としても指定できるプリペイド・カード(MoneyCard:Green Dot銀行と提携)を発行、更に店頭では送金や小切手の現金化サービスも提供している。

2021年1月、ウォルマートは、Fintech分野で実績のあるベンチャー・キャピタル:Ribbit Capitalと共同でHazel社を創業、経営陣としてGoldmanSachsでデジタル銀行Marcusの総責任者だったオメル・イスマル氏と(同氏の右腕である)デビッド・スターク氏(Citi出身)を招聘した。

■ One FinanceとEven Responsible Financeの買収
2022年1月、Walmartは、Hazel社によるフィンテック・ベンチャー2社の買収を発表した。One Financeは、Coastal Community Bank(ワシントン州)と提携し、モバイル・アプリで銀行サービスを提供するネオバンクだ。一方のEven Responsible Financeは、企業が福利厚生サービスの一環として提供する「給与前借り融資(注)」のアウトソーサーだ。同社の大手顧客にはWalmartがあり、Paypalや健康保険大手のHumanaもユーザーだ。ONEのCEOには、GSバンク出身のIsmail氏が就任した。
(注):米国では、通常2週間毎で給与が支払われるが、次の支給日前に現金が必要な社員に対して、2週間以内の融資を行い給与支給日に自動返済するサービス。時給ベースの社員から支持が高い福利厚生サービスである。

2社のサービスは融合されてブランド名は「ONE」となり、2022年前半のローンチが予定されている。まずはウォルマートの米国内従業員160万人と来店客(1週間で1億人)がターゲットになると思われる。

■ 今後の展開
ONEが提供する前借融資と銀行サービスの組み合わせは、現時点では競合がなく、所得のあまり高くない顧客層にアピールすると思われる。今後は、BNPLとの組み合わせた新たな融資スキームが考案されたり、Evenが提供している「金融教育サービス/家計管理機能」と、Oneの「クレジット・ビルダー(日々のお金の使い方を工夫することで、クレジット・スコアを高める方策を指南する)」が、次世代顧客の資産作りプラットフォームとなるとの見方もある。

ONEは、究極的には様々な金融サービスをワンストップ提供する「フィナンシャル・スーパー・アプリ」を目指すだろう。ただこの分野は、フィンテック企業だけでなく、テクノロジーに強いPapalやApple、また既存大手銀行やGS Bankなどもサービス強化を狙っている分野で競争が激しい。ただWalmartには、「金融サービスを(アマゾンのクラウド事業のように)小売り事業に並ぶ第二の柱にしたい」との野望もあると言われいる。今後の動向に注目しておきたい。