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API活用の近未来はERPバンキング?

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2010年代後半、世界各地の規制当局は金融機関に対してAPI公開を義務化しました。当初、銀行はこのOpenAPIの流れに必ずしも積極的ではない印象でしたが、昨今では、顧客エクスペリエンス向上の視点から前向きな取り組みが行われています。ここでは、コマーシャル・バンキングにおけるトレジャリー管理サービスの新しいアプローチとしての、ERPバンキングをご紹介します。


■ 銀行APIの活用に関する企業のニーズ
2023年第三四半期、Datos Insightsでは、企業の財務部門/会計部門に対するグローバル・アンケート調査を実施したが(日本を含む11か国合計1000社)、金融機関とのAPI接続に関する設問に対して興味深い結果を得た。

Q1:融資手続きが迅速に行われるならば、データをAPI経由で金融機関に提供したいですか?
A1:(ぜひ提供したい/提供したいの合計)会計データ=83%、CRMデータ=78%、ERPデータ=78%、受発注データ=76%

Q2:自社で利用しているERPから、銀行が提供する金融サービス機能を直接利用できることは重要ですか?
A2:(非常に重要/重要の合計)大企業93%、中堅企業93%、スモールビジネス81%

現在、金融機関におけるオープン・バンキングの取組みは、技術としてのAPI仕様を公開する形態が多いようだが、上記のアンケート結果からは、顧客企業はもう一歩踏み込んだ、APIを活用した統合ソリューションを求めていると思われる。


■ Citizens Bankが提供するERPバンキング
米国の準大手銀行で東海岸に支店網を展開するCitizens Bank(預金量1600億ドル(米ランキング13位)、支店網1000店舗)では、ERPへのプラグイン:ERPConnectの提供を開始している。ERPConnectは、Citizensが企業顧客に提供しているトレジャリー・マネジメント・サービスとペイメント機能をERPから直接利用できる仕組みで、買掛管理/流動性管理/取引照合などが可能となっている(現時点ではオラクルNetSuiteのみが対象:導入するとNetSuiteの「タブ」に「Citizens」が追加される)。

ERPは請求書を受領する毎にそこから必要な情報を読み込んで支払いデータを作成するが、ERPConnectを導入すると、各支払いデータは指定したタイミングで自動的に送金指示/小切手送付指示としてCitizens Bankへ送られる。一方、銀行からは決済が完了するまでの進捗が、企業のERPへリアルタイムで反映される。


■ ERPバンキングの時代に?
Citizens BankのERPConnectにより、ユーザー企業は自社ERPと銀行のトレジャリー・マネジメント用ポータルを使い分けることなく、ERPのダッシュボードだけで業務遂行が可能となる。ERPConnectの機能はまだ限定的だが、今後このようなERP/銀行サービスのインテグレーションが拡張され、更にAIを活用したデータ分析が加われば、財務部門の様々な業務の効率化やより効率的なトレジャリー・マネジメントが可能になると期待されている。

一方、機能拡充に加えて、サービスの価格体系や課金方式(ライセンス・フィー?/トランザクション・フィー?、顧客負担?/ERPベンダー負担?など)へのコンセンサスも必要になるだろう。Datos Insightsでは、2024年はERPバンキング元年になるのではないかと予想している。


(参照)
・Datos Insights 2024年1月発行レポート「Top 10 Trends in Commercial Banking & Payments, 2024: Modernization Creates New Opportunities Across the Industry
・Datos Insights 2023年9月発行レポート「ERP Banking: API Monetization and Use Cases