2022年11月のリリース以来、「ついに汎用人口知能の出現か?」と話題になっているChatGPT(Generative Pre-trained Transformer)ですが、生徒がエッセイの宿題を人工知能に書かせるのではとの懸念から、多数の教育委員会がChatGPTの利用制限を発表しています。一方、アーリーアダプターの先生方は授業への応用を始めており、成果があがっているとの報道もなされています。ここでは12月から1月のChatGPTに関する報道をまとめてみました(素早い動きが素晴らしいと思います)。
■ 高性能チャットボットの出現
2022年11月にOpenAI社がリリースした対話型人工知能ChatGPT(ベータ版)に注目が集まっている。ChatGPTは、従来のチャット・ボットに比べて、自然言語処理の能力が飛躍的に高まっており、多くの質問に自然で適切な回答を返すことができる。加えて単なる質疑応答だけではなく、指示に合わせた小論文/エッセイの作成やプログラム・コードを書くこともできる。
例えば「アメリカ独立戦争を300Wordでシェイクスピア風の文体で書いてほしい」や、一旦ChatGPTが作成したエッセイに対して「第四章に事例を追加してほしい」などの要求にも適切に対応できる。日本語でのやり取りも可能だ。また、倫理的に不適切な質問には回答しないなどの工夫を織り込まれている。
高性能な人工知能登場の背後には、インターネット上の大量のデータを教師なし学習できるLarge-scale Language Model(LLM)の研究が進んだことがある。ChatGPT以外にもGoogleのBERTやMetaのGalactica、画像処理のStable DiffusionなどがLLMに基づくAIだ。
■ 教育委員会はパニック
新年早々の1月3日、ニューヨーク市の教育委員会は、市内の小中学校のネットワークからChatGPTへのアクセスを禁止する発表を行った。「生徒に対する影響がはっきりしない中、ガイドラインを作成するまでの処置」だとしているが、エッセイの宿題などをChatGPTに作成させるケースを想定した対策だと考えられている。ロサンジェルス市やワシントンDC、バルチモア市なども同様の禁止処置を発表した。
人工知能に関する国際会議であるInternational Conference on Machine Learningでも、この1月にLLMを活用した論文は受付けないことを発表した(論文の推敲にAIを利用することは可能)が、同時に2024年にルールを見直すことも表明している。背景には、現時点において盗作レポートをチェックするソフトウエアでは、ChatGPTなどの人工知能で作成した論文の検知が難しいことがあるようだ。
■ 禁止よりも早期活用の必要性
一方「アーリーアダプター」の先生方は、早くも授業でChatGPTの活用を始めている。オレゴン州の高校では、エッセイを書く際、まずChatGPTでアウトラインを作成し、それを参考に本文を記述することで、ストラクチャーがはっきりして分かりやすいエッセイを書けるようになったとしている。ロードアイランド州の中学の先生も、授業の理解度を判断するテストをChatGPTを作成したところ、自動作成した問題10題(いずれも三択)のうち6題がそのまま利用可能だったとしている。
これ以外にも「ChatGPTが作成したエッセイの問題点を挙げる授業(クリティカルシンキングを育てる)」や「生徒が作成したエッセイをChatGPTで読み解き、個々人の強み/弱みを把握して指導に役立てる」などのアイディアもだされている。もちろん、先生の生産性向上ツールとして「採点の自動化や報告書作成への応用」や、(大学では)自分の講義のシラバスをChatGPTで作成した先生もいるとのことだ。ChatGPTを含め、人工知能の応用は今後も急速に進むと思われ、その動向に注目しておきたい。