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米国株の翌日決済(T+1)移行はスムーズに完了

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米国の株式市場では、5月28日(火)より取引後の決済期限が2営業日から1営業日以内へと短縮されました(いわゆる「T+1移行」)。幸い大きな問題も発生せず、5月31日(金)には関係団体から移行完了宣言が出されています。


■ 米国証券取引のT+1移行とは
何事でも取引と決済が同時に行われるのが理想かもしれないが、金融商品取引の場合、資金の準備や事務処理のため決済までにある程度の時間が必要であり、世界の株式市場では取引後2日以内に決済が行われる「Trade Date+2Days(=T+2)」が一般的である。米国証券取引委員会(SEC)は、2023年2月に、未決済リスクの削減や資金(預託金)の有効活用などの視点から2024年5月28日にT+1へ移行する旨を表明した。

証券業界各社は、T+1に対応できるようバックオフィスの業務プロセスを見直し、また切換え当日には、不測の事態に備え残業体制や時差の異なる他拠点からの支援体制を整えていたが、決済不成立が増える可能性(資金手当ての遅れや取引に誤りがあった際の修正が間に合わないなど)が懸念されていた。また、T+1移行初日(5/28)分の取引決済が実施される5月29日は、最後のT+2決済となる5月24日分の決済も行うことから(米国は5/27は休日で3連休だった)、混乱の生じる可能性を否定できなかった。


■ スムーズな移行が完了
証券取引の実務では、投資家側が決済前に取引内容を承認する確認処理(Affirmation)の承認率が高ければ、決済不成立が少ないとされている。T+1後のAffirmationの期限は取引日当日夜9時となったが、5月28日夜9時のAffirmation率は92.76%と前週の89.59%を超えたことから、証券業界では移行に大きな問題が無いようだとの安心感が広がった。

更にT+1決済初日の5月29日夕方には、証券業協会(SIFMA)は「T+1移行に関して前向きな感触(Optimistic)を得ている」とする声明を出し、続いて5月31日(金)には、SIFMAとThe Investment Company Institute(ICI)、Depository Trust & Clearing Corporation (DTCC)が共同で「T+1移行はスムーズだった(Positive)」として証券業界関係各社の対応に感謝の意を表明した。


■ 他国への影響
米国と同じ時間帯で証券取引が行われているメキシコ/カナダ/アルゼンチンでも、同時(厳密には米国より1日早い5月27日(月)から)に T+1決済へ 移行した。T+1はグローバル潮流となりつつあり、インドは既に実施済み、英国も2027年までに実施するとの意向を表明している。EUでも検討がなされているとの報道がある。日本の証券決済も2019年に T+3 からT+2となり、決済までのリードタイムを短縮する方向だ。

一方、米国株式を取引する海外の投資家にとっては、時差を考慮しながら T+1対応する必要があり(特に取引同日夜9時までのAffirmationや翌日までの資金手当てなど)、苦慮しているとの報道も多い(日本の機関投資家の場合、日本時間の夜に米国株式を取引した場合、翌朝7時(米国標準時間の夜9時)までにAffirmationを行わなければならない)。T+1への移行自体はスムーズに行われたようだが、それにまつわる業務処理が定着し、影響が収束するにはもうしばらく時間が必要なようだ。