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生成AI活用でマネーロンダリング精査を効率化:Luci Copilot

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マネーロンダリング対策には、様々なデータと多様な手段を活用したスクリーニングが行われていますが、犯罪の手口も時々刻々複雑化/巧妙化していることから、人手での精査が必要なアラートが増加し、結果、金融機関のマネーロンダリング対策現場には多大な負担がかかってます。この課題に対して、生成AIを使った要約/チャットでのQ&A/レポート作成機能等で担当者を支援するLucinity社のLuci Copilotの話題です。


■ マネーロンダリング対策の課題
昨今、金融犯罪に関するコンプライアンスに準拠するためには、複雑な手順が求められている。AIなどを使ったシステムによるスクリーニングも強化されているが、システムで判断が付きかねるケースはも増加しており、金融機関にとって精査作業の効率化が大きな課題となっている。

・対象ケースに関する情報(送金元/送金先に関する様々な情報)は、社内外の複数のシステムにばらばらに存在しており、多様なデータベースやWebサイトにアクセスし情報収集しなければならない。

・情報を収集した後、それらがどのような関連を持つのか(犯罪につながるのかどうか)明確でないケースがほとんどであり、調査を深めようとすればするほど時間がかかる。

・システムで抽出したアラートには擬陽性(問題のない取引であるのに疑義があると誤認してしまう)も多く、結果人手による精査が必要なケースが増加している。機械学習を使ったスクリーニング・システムも開発されているが、まだ明確な効果は見られないようだ。

このため、金融機関の担当者は忙殺されており、精査の一貫性が損なわれたり、当局報告資料に不備が生じる等の悪循環に陥っている。


■ Lucinity社のLuci Copilot
2023年春にリリースされたLucinity社のLuci Copilotは、マネーロンダリングの精査業務を生成AIを活用して効率化するサービスだ。Luci Copilotは、社内のスクリーニング・システムで「アラート扱い」となったケースは関連する情報を社内外のシステムから収集し、1つの画面にまとめてスクリーニング担当者に提示する。

・ケースの概要は生成AIを使って「Summary of Insights」としてまとめられる。担当者はなぜこのケースが「アラート」となったかを即時に理解できる。

・Luci Copilotが収集した情報に対する質問をチャット・ボックスに入力すると、解説が提示されケースに対する理解が深まる(例:なぜビヘイビア・スコアが「ハイリスク」なのか解説がなされる)。

・疑念があり当局報告が必要な場合、該当項目をチェックしてレポート作成を指示すれば、レギュレーションに準拠した報告書が自動作成される。

これらの機能の結果、アラート1件を処理する時間は、従来の20-25%程度にまで削減できるという。また、金融機関がスクリーニング担当者を養成する期間も大幅に短縮できると想定されている。


■ 生成AI実用化の第一歩
Lucinity社は、2018年創業のベンチャー企業であるが、生成AIの活用には創業当初から取り組んできた。2023年に入ってマイクロソフト/OpenAIのGPT4を活用し、Azure上で稼働するLuci Copilotをリリース、金融機関からの評価は高いようだ。Datos Insightsでは、2023年9月に同社を「2023年度AMLインパクト・アワード(Best Financial Crime Investigation and Reporting Innovation部門)」に認定、その概要をレポート「The 2023 Impact Awards in AML」にまとめている。

生成AIの実用化はまだ始まった段階であり、Lucinity社はその先陣と言えよう。同社の発展に注目するとともに、本年は、様々な分野での生成AI実用化に注目しておきたい。