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チャットボットでSMB顧客のエクスペリエンス改善:Citizens BankのDigital Butler

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米国の準大手銀行Citizens Bankが推進するコマーシャル・バンキング顧客向けデジタル・トランスフォーメーションの話題です。チャットボットを活用してカスタマー・エクスペリエンスの改善を目指しており、早くも成果がでているようです。同行のDigital Butlerは、弊社の2023年度「インパクト・アワード:キャッシュ・マネジメント&ペイメント部門」にも選出されています。


■ Citizens Bank:Digital Butler Service導入の狙い
Citizens Bankは、ロードアイランド州に本社を置き、東海岸を中心に11州1100店舗を展開する全米14位の金融機関(準大手銀行/大規模地銀)である。同行ではコマーシャル・バンキング業務のデジタル・トランスフォーメーション(DX)を推進するにあたり、SMB顧客のオンボーディング(既に取引がある顧客が新たなサービス/商品を申し込む際の手続き)の改善を中心としたカスタマー・エクスペリエンス向上を最優先課題に据えた。更に、この取組みを通じ社内業務の効率化も同時達成することを目指した。

Digital Butler Serviceは、2021年にプロトタイプ開発に着手、2022年12月に正式リリースされた。同サービスは、既存企業顧客向けにコマーシャル・バンキング・サービス全般の問い合わせ/業務処理に対応できるチャットボットで、顧客は専用のモバイル・アプリかWebサイトからアクセスする。問い合わせ内容に応じて、必要ならば担当者やコマーシャル・バンキング業務専用のCommercial Priority Service(CPS)エージェントへ引き継ぐことも可能だ。Digital Butler Serviceが開始される前は、顧客は担当者かCPSエージェントにメール/電話で連絡していた。


■ Digital Butler概要
Digital Butler Serviceは、セールスフォースのクラウド基盤上に自社開発されており、3つの機能をカバーしている。

(1)オンボーディング時のエクスペリエンス改善
既存顧客が追加の金融サービスを申込む際には(ビジネス口座を持つ顧客がローンや外貨の手配など、これまで利用していなかったサービスを使う)、新たな口座開設書類への記入が必要となるが、銀行が既に保持している顧客データを活用して出来る限り申込書を銀行側で事前記入することにより、顧客の手間を最小限に抑える。

(2)ノレッジ・センター・ライブラリーの整備
顧客がチャットボットを使ったセルフサービスで課題を解決できるようデータベースが設ける(ビデオクリップでの解説もある)。

(3)質問事項に関するトラッキング
その場で解決できない問題/問い合わせに関しては、(IT関連の問合わせ等と同様)チケット番号が自動交付され、銀行内でどのような処理/検討が行われているのか、顧客がWebサイトから進捗状況をトラッキングできる。

全ての問い合わせ対応は、必要ならば途中から担当者やCPSエージェントを呼びだすことも可能で、かつ顧客とのやり取りは、(チャットボット/電話/メール/Webサイト・アクセスなどチャネルにかかわらず)統合管理されているため、担当者やエージェントが手続きの途中からでもスムーズに対応できる。このような仕組みの改善を続けることで、自動化と対人サービスの最適な組合せを狙っている。


■ 導入成果と将来計画
Citizens Bankでは、Digital Butler Serviceの利用件数は、毎月、前月比で3%増を示しており、順調な滑り出しだとしている。また、コールセンター/チャットボットでの自動回答率(エージェントに繋ぐ前に解決)が15%増、解決が翌日以降に持ち越される割合も10%から7.5%に下がったという。

Digital Butlerの開発チームでは、2023年度は毎月新機能のリリースを行っており、現在以下のような開発テーマを手掛けているという。
・生成AIの活用によるチャットボットの改善
・担当者のスケジューリング/アポイント設定機能の追加
・オンボーディングの100%セルフサービス化
・顧客ダッシュボードのパーソナライゼーション(機能の選択が可能に)

同行は、Digital Butlerにより、DXの推進目的であるデジタルとヒューマン・タッチの最適化による「顧客満足度/リテンション率改善」「オンボーディング改善によるクロスセルへの好影響」「社内業務の効率化/社員リソースのより高度なサービスへのシフト」へ、順調な一歩を踏み出したように思えるがどうだろう。