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2023年の金融事業を占う:IT投資にメリハリをつける年

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アイテ・ノバリカ・グループでは、銀行/証券/保険など各調査チームが毎年1月にその年の「Top10 Trend レポート」をそれぞれ発行しますが、ここでは2023年に共通する方向感をまとめました。今年もどうぞよろしくお願いいたします。

■ 2021/2022年:パンデミックによる変化が加速
2020年初から始まったコロナ・パンデミックとそれに伴うロックダウンの結果、金融業界はその対応に追われながらも、生き残りをかけてデジタル・トランスフォーメーションを進めてきた。多数の金融機関が、デジタル・サービスにおけるカスタマー・エクスペリエンスを重要な差別化施策と位置づけ、最初はとまどっていた顧客もデジタル・サービスに対する期待値を高めてきている。

顧客とのやり取りがデジタル化され、顧客の足跡がデジタル情報として収集できる一方、クラウドでのデータ分析基盤が普及してきたことから、経営判断やマーケティングにデータを活用する流れが本格化してきた。ただ、デジタル/モバイル/オンライン・サービスの普及が新たな不正手段を生み出す背景ともなっており、金融機関は不正防止対策の手を休めることができない。

■ 事業環境の変化
2022年はパンデミックからニュー・ノーマルへの移行の年でもあった。ところが欧州で始まった「第二次世界大戦後最大の戦争」を含め、ジオ・ポリティカル情勢の不安定化が「インフレと金利の上昇」「不況の可能性」「サプライチェーン問題」「エネルギー/食料等コモディティ価格の上昇」などの引き金となり、世界的な経済環境の変化が大きな課題となっている。

加えて、気候変動対策をめざす新たなレギュレーションの論議も欧州を中心に始まっており、ESG投資やESGローンに大きな影響を与えると考えられる。ただ。これらを取りまとめるべき先進国各国は、前述の経済環境の変化に加え、それぞれの政治基盤の不安定化に悩んでいる。一方、消費者は、セキュリティやプライバシー保護など、社会のデジタル化に伴う課題に関心を高めている。

■ 2023年の動向予想
今年の金融機関各社のIT投資は、経済環境の不透明感からコスト重視の慎重な姿勢(Do More with Less)になると予想される。限られた予算を何に振り向けるのか、金融機関もソリューション・ベンダーも熟考が求められるはずだ。必要なテクノロジー投資(例えば、データ分析力の強化やAPI/コネクティビティ活用、新たな犯罪パターンへの対応など)の遅れは致命傷になりかねない。

各社は、自社の立ち位置とパンデミック後のあるべき姿を見据えながら、自社の主力事業のシェイプアップに注力し、短期的な安定性の確保と長期的な成長を同時にめざさなければならないと考えるがどうだろう。

ABOUT THE AUTHOR

Steven Suzuki is the Head of Asian Operations at Aite-Novarica Group, focusing on business development in Asia. Steven brings to Aite-Novarica Group over 20 years of experience in the Japanese financial services and information technology industries through Datos Insights's acquisition of Solution Services Inc. Steven founded Solution Services in New York in 2005. Based on a deep understanding of U.S. and Japanese financial industries, business practices,…

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