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住民からの問い合わせをチャットGPTで対応:MD州モンゴメリー郡のMonty2.0

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2024年5月にリリースされたメリーランド州モンゴメリー郡政府の住民サポート・チャットボットMC311の話題です。コロナ・パンデミック時に導入したチャットボットをChatGPTを活用してアップグレード、住民にも好評のようです。フィードバック機能を設けて継続的なエクスペリエンス改善をめざしています。


■ メリーランド州モンゴメリー郡政府のチャットボット導入
ワシントンDCに隣接するメリーランド州モンゴメリー郡は、DCのベッドタウンであるとともに、国立標準技術研究所(NIST)やサイバーセキュリティ・センターオブエクセレンス(NCCoE)など連邦政府のテクノロジー関連機関もあり、サイバーセキュリティやバイオテクノロジー分野のスタートアップ企業も多い。また25歳以上の住民の半数以上が大学卒以上で、所得水準が高い地域でもある。

モンゴメリー郡政府は、2020年のコロナ・パンデミック時に311コールセンター(注)への問合せが殺到したことから、2021年1月に電話の待ち時間短縮をめざしてチャットボット「Monty」を稼働させた。Montyは、郡政府WebサイトのFAQをチャット・インターフェースで参照するもので(音声/文字双方での利用が可能)、電話の待ち時間短縮(5分から2分へ)や待ちきれずに電話を切ってしまう件数の削減には効果があったが、使い勝手の面からは必ずしも高い評判ではなかった。

(注)米国のほとんどの地方自治体が緊急通報用の911番に対して、非緊急の問い合わせ電話:311番を設けている。提供しているサービスは、日本の地方自治体の「市民相談コールセンター」や「住民サポートセンター」等に相当すると考えて頂ければと思う。


■ Monty2.0へのアップグレード
2023年初からのChatGPTへの注目の高まりを受け、モンゴメリー郡政府では、2023年5月に生成AIを活用したチャットボットMonty2.0のPoCを開始した。これまでのMontty1.0と比べ、回答できる範囲を大幅に拡大し住民からのほとんどの問合せに対応できることを目指した。また140か国の言語への自動翻訳機能も付加されている。テクノロジー面は、ChatGPTとマイクロソフトのCognitive Serch Serviceが活用されている。

Monty 2.0は、10か月後の2024年3月に正式リリースされ、利用件数はMonty1.0時代の2倍以上に増えている。市民とのやり取りの最後にサムアップ/サムダウンのアイコンをクリックしてコメントを書き込むフィードバック機能も好評だ。郡政府は、この機能により市民の満足度とチャットボット改良につながるコメントを収集し、ノレッジベースの拡張やユーザーエクスペリエンス改善へのインプットとしている。2024年10月からは、住所など、住民が入力した情報に基づく回答(ゴミ収集日の案内や投票所の場所など)も可能になった。


■ アジャイル/スプリントでシステム開発
Monty2.0の開発は、マイクロソフトのサポートを得ながらすべて職員により構成されるアジャイル・チームが担当した。今後の機能追加計画は、311コールセンターとの連携(現在はチャットボットとコールセンターが独立しており、チャットボットで問題が解決しないと、改めて電話をかけ直す必要がある)や、チャットボット経由での各種書類(申請書など)のアップロード機能、GIS情報との連携(チャットボットの回答を地図情報として提供できる)などがあがっているという。

モンゴメリー郡政府では、Monty2.0の利用推進とともに、住民に対して積極的なフィードバックを呼びかけており、更なる住民エクスペリエンスの改善を進めるとしている。