7月26日のファイナンス・タイムズ紙が「JPモルガン・チェイス銀行のアセットマネジメント/ウェルスマネジメント部門が、自社開発した生成AIツール “LLMスイート”の社内展開を開始した」とする記事を掲載したことで、欧米の金融業界ではちょっとした話題になっています(JPモルガン・チェイスの広報部門はノーコメント)。各社の報道をまとめてみました。
■ 自社開発生成AIツール
報道によると、JPモルガン・チェイス(JPMC)銀行のアセットマネジメント/ウェルスマネジメント(AWM)部門では、自社開発した生成AIツール(社内名称LLMスイート)をフィナンシャル・アドバイザー(FA)のサポート・ツールとして利用を開始したという。具体的なサポート内容として(これまではFAがリサーチ・アナリストに依頼していた)「適切な投資情報やソリューションに関する情報の収集」「ニュース/トピックスに関する解説」などを挙げており、FAの生産性向上を狙っているとしている。
「LLMスイート」は業務を限定しない汎用ツールで、本年に入って全社員の大よそ15%に相当する5万人が、原稿作成/アイディア考案/文章の要約など、ChatGPTと同様な様々な用途での利用を始めているとしている。
■ 米金融機関における生成AI活用の取組み
米国の金融機関でも、2022年末のChatGPTリリースを受け、生成AI活用に対する関心は非常に高まっているが、顧客情報漏洩の懸念やAIの内部構造が把握できないことから、ChatGPTやGoogle Geminiなど汎用ツールの利用には懐疑的な企業が多く、社員の社内利用を禁止としているケースも多い。
JPMCも、AIツールの開発/活用には非常に積極的だが、社員のChatGPT利用に関しては2023年早々に禁止としていた。一方、2023年4月には、連邦準備制度理事会の理事長のスピーチをAIで分析して、金融商品の取引シグナルを取り出す試みを行ったり、同年5月には「IndexGPT」という商標を登録している。恐らく2023年の早い時期から、独自の生成AIツールの開発に着手していたと思われる。
一方、モルガン・スタンレーは、Open AIと提携し「FA向け生成AIツールを導入した」と発表しており、JPMCとは異なるアプローチを採用しているようだ。各金融機関の生成AI活用の取組みに関しては、引き続き注視しておきたい。