米国の証券決済は2024年5月から翌日決済(T+1決済)に移行しましたが、それを受けて欧州でもT +1の導入機運が高まっています。10月15日の欧州証券市場監督局(ESMA)の発表でも英国やスイスとタイミングを合わせ2027年度実施に向けた検討が進んでいるようです。
■ 米国でのT +1移行はスムーズに完了
米国の証券決済は2024年5月28日から翌日決済(T+1決済)に移行した。実施直前まで様々な懸念が示されていたが、想定以上にスムーズな移行ができ、資本市場参加者が清算機関(NSCC)に預ける預託金も20-25%程度削減できた模様だ。ただ、各社は決済が早まっても正確を期すために体制強化などを行ってきたことから、今後はこれらの自動化などコスト削減策が必要となる。
■ 欧州でもT +1導入の機運高まる
EUでは、2023年に「European T+1 Industry Task Force」を設け、T+1導入の検討を進めてきたが、米国の移行を受け導入機運が高まっている。10月15日には、欧州証券市場監督局(ESMA)、欧州委員会(European Commission)、欧州中央銀行(ECB)が共同してT+1導入に関する今後の方向性を発表した。発表内容の概要は以下のとおり(タスクフォースの見解も含む):
・欧州各国の証券決済に関するレギュレーションや仕組みが異なることから課題は多いものの、T+1移行には大きなメリットがある。
・欧州の各CSDは、技術的には既にT+1対応が可能
・技術論に加え、T +1をサポートするレギュレーションの変更にも時間が必要だが、24か月から36か月で実現可能と考えられる
・米州でも行われたように地域全体の同時移行はメリットが大きい。そのため英国とスイスとも歩調を合わせたい(米州では、米国と同時にカナダ/メキシコ/ジャマイカ/アルゼンチンがT +1移行)。
・このあと正式なレポートを作成し欧州議会で説明し、強制力のある議会決定に進みたい。
今回のアナウンスでは具体的な移行日程は明示されていないが、既にイギリスが2027年末までのT+1移行を正式表明しており、事実上EUも2027年末を目指したと理解されている。
■ APACでの地域同時移行はなるか
アジアに目を転じると、インドは既にT+1を実施しており、2024年3月からは25銘柄に限定したT+0の試行が開始されている(インド国内のリテール市場のみが対象)。オーストラリアも決済システムの更新を済ませ、最短2026年にPhase1移行が出来ないかの検討がなされている。ニュージーランド市場は、オーストラリアと二重上場の銘柄が多いだけに同一タイミングとなる可能性が高い。これらを受け、今後日本でも証券取引のT+1論議が活発化するように思われるがどうだろう。