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人工知能の普及

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昨年末のChatGPTのリリースをきっかけに、生成系AI活用に関する論議が活発化していますが、ここでは、自動車や携帯電話など広く活用されているテクノロジーがどのように普及してきたかを振り返り、生成系AIなどの人工知能がどのように普及していくかを考えてみました。

■ 携帯電話と自動車の普及

ChatGPTが公表されて半年がたち、各方面では、数か月から数年のうちに社会に大きな影響を与えるとの論議が起こっているが、ここでは、まず、現在広く普及しているテクノロジーが、過去どのように普及したかを振り返ってみたい。

世界的に最も急速に、かつ広く普及したテクノロジーは携帯電話だろう(2022年時点で、世界人口80憶人に対して携帯電話の契約数は80億を超えている)。1946年に米国で車載電話が登場した際には、トランクに搭載する30㎏もの通信機器が必要で、1950年時点のユーザー数は1万人以下だったという。その後1983年に個人が携行できる携帯電話が登場したが、レンガのようなサイズで価格も現在価値で150万円以上した。

日本では、1987年にNTTが携帯電話サービスを開始し、1992年にはNTTドコモとして独立した。1990年には5%以下だった日本の携帯電話の普及率は、2000年には70%に達し2005年には90%を超えた。その背景には、機器の価格+毎月のサービス料金と比較して、所持することで得られる価値が広く認められたことが大きい。1999年に登場したNTTドコモのiModeが、普及率を70%から90%に押し上げたことも想像に難くない。

一方、自動車の普及には、携帯電話よりも長い時間が必要だった。この背景には、単なる費用対効果の視点に加え、道路インフラやメンテナンス体制の整備、交通事故対策(免許証制度/ブレーキやエアバッグなどの技術面/道交法・自動車保険の整備など)や環境対策(排ガス規制や燃費の改善、電動車など)など、自動車の普及台数に合わせ様々な社会体制の整備が必要だったからだと考えられる。

■ 人工知能の普及に必要な時間は?

人工知能に関する取り組みは、1950年代から始まったが、2000年前後から機械学習/ディープ・ラーニング(大量のデータを読み込むことでコンピュータ自身がアルゴリズムを考案する仕組み:それ以前は人間がアルゴリズムを作成していた)が実用域に達した。2006年に登場したグーグル翻訳や2011年にクイズ番組で歴代チャンピオンに勝利したIBMのワトソンなどがそれである。

その後、ディープ・ラーニングを画像認識に応用した顔認識や自動運転も研究が進み、一部では実用化が始まっている。ただ、大量のデータからアルゴリズムを作成するアプローチは、現時点では100%の正解を得ることが難しく、また結果を出すステップが人間の思考手順とまったく異なるため、なぜその答えに行き着いたかの説明が難しいという課題がある。現在実用化されている顔認識や自動運転も、プライバシーよりもセキュリティや本人確認を優先しなければならない場合や、低速度での運転/自動車専用道路に限定されており、加えて代替手段の提供などの工夫もなされている。

ChatGPTをはじめとする生成系AIは、ディープラーニングを自然言語処理に適用した大規模言語モデルだが、顔認識や自動運転などと同じ課題(=正解率や説明責任)を抱えている。100%でなくとも確率が上がれば効果があがるケースや、AIの回答を人間が参照して判断する業務ならば、社会に貢献できる分野が多々あるはずだ。一方、このような特性に応じたルール作りが必要だが、何をどう規制すれば良いのか、その内容はまだ暗中模索のように思われる。

人工知能の普及は、その価値がストレートに伝わった「携帯電話型」よりも、様々なインフラ整備にあわせて普及した「自動車型」のような発展段階をたどるのではないかと思われるがどうだろう。