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プライベート・マーケット:ブラックロックがPreqinを買収した理由

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2024年7月、ブラックロックが、プライベート・マーケットのデータプロバイダー:Preqinの買収を発表しましたが、ここではその背景を考えてみました。
(当ブログは、弊社アナリストAdler Smithがポストしたブログ「Why Is BlackRock Acquiring Preqin?」の翻訳版となります)。


■ 買収発表の概要
世界最大の資産運用会社であり、キャピタルマーケッツ企業へのテクノロジー・プロバイダーでもあるブラックロックは、プライベート・マーケットのデータプロバイダー:Preqin社を32億米ドルで買収すると発表した。

ブラックロックは、Preqinが提供しているデータとリサーチ・ツールを自身の統合ポートフォリオ管理サービス:Aladdinの中のオルタナティブ資産管理ソリューション:eFrontに統合することで、プライベート・マーケット関連機能を大幅に強化することができる。オルタナティブ資産は、2030年ごろまでに40兆米ドル近くに達すると想定される急成長分野である。


■ 買収の影響
Datos Insightsでは、今回の買収はプライベート・マーケットへの注目が高まるキャピタルマーケッツ業界の大きな流れに沿ったものだと考えている。

1.オルタナティブ・データの提供拡大:
Preqinは、プライベートエクイティ、ベンチャーキャピタル、ヘッジファンド、不動産、インフラストラクチャー、プライベートデットなど、オルタナティブ資産に関するデータを網羅しており、プライベート・マーケットに関するデータ需要が拡大している現在、ブラックロックにとっては、資産運用会社としての自社利用だけではなく、テクノロジー・プロバイダー/データ・アグリゲーターとしても大きなメリットが想定される。

2.顧客サービスの強化:
ブラックロックは、Preqinのデータとリサーチ機能をアラジンに統合することで、機関投資家やウェルスマネジメント顧客に対して、オルタナティブ投資に関する多様なサービスを提供でき、アラジンの競争力が高まる。

3.プライベート・マーケットの重要性の高まり:
機関投資家や富裕層顧客は、投資ポートフォリオに対するオルタナティブ資産の組み入れを増やしているものの、プライベート市場へのアクセスやデータに関する透明性/可用性/標準化などには課題が残っている。今回の合併は、これらの課題に対するブラックロックの回答の第一歩と言えよう。

4.Front-to-Backプラットフォームへの需要拡大:
ブラックロックは、2019年に買収したオルタナティブ資産管理ソリューションeフロントをAladdinプラットフォームに統合してきたが、今回それにPrequinのデータが加わることで、Aladdinをより包括的なポートフォリオ管理プラットフォームとすることができる。

5.プライベート・マーケット・ソリューションの事業統合:
ブラックロックとPreqinの合併は、統合が進むプライベート・マーケットに関する金融データ・アナリティクス・ソリューションの象徴ともいえよう。これまでの合併事例としては、以下がある。
・2023年:MSCIによるプライベート・マーケット・データ/テクノロジー・プロバイダBurgissの買収
・2021年:ステート・ストリートによるプライベート・マーケット投資データ管理プラットフォームMercatusの買収
・2016年:モーニングスターによるプライベート・マーケット・データ/分析プロバイダPitchBookの買収


■ 今後の注目点
買収提案が正式に決まった後は、ブラックロックがPreqinのデータとリサーチ・ツールを自社のAladdinにどれだけ迅速に統合できるか、また、ブラックロックがPreqinのソリューションを引き続き単独で提供するのかどうか/いつまで提供するのかが注目される(現時点では、単独でのサービス提供が引き続き行われるとされている)。

Datos Insightsでは、今後(1)プライベート・マーケット・データの競争環境がどうなるのか(今回のM&Aで独立系大手データ・プロバイダーはすべて買収された)、また(2)ブラックロックのAladdinのようなフロント・ツー・バック統合投資管理プラットフォームの競争環境にどのような影響が出てくるのかに注目したいと考えている。